五線軌条

生活と芸術とか。

2022-01-01から1年間の記事一覧

極夜抄(二十七)

急なノスタルジー(?)に駆られたのだろうか、先日、急に米澤穂信の古典部シリーズを読み返し始めた。 人並みに本を読むのは好きな私だが、好きな作家を訊かれると若干困ってしまう。好きな作品は存在しても、特定の作家を好きと言えるほど単一作家の作品群…

極夜抄(二十六)

日本学術振興会の電子システムにログインし、結果を確認した私は、そのままそっとブラウザを閉じた。仮にラップトップで接続していたならば、「ぱたりと閉じた」とでも記述しただろう。生憎私はスマートフォンで結果を見たので、そんな視覚的にわかりやすい…

極夜抄(二十五)

短い帰省を終え、都市生活に回帰してから二週間が経過した。今、私は大阪を離れ、東京は丸の内にいる。夜行バスの発車まで時間を潰す場所が見つからなかったため、中央郵便局の脇のベンチで時が過ぎるのを待っているのである。 日中こそ暑くなったが、夜はも…

極夜抄(二十四)

私は名阪間を西へと向かう新幹線の車内にいる。久しぶりというほどでもない帰省を終えたばかりだった。 大阪から新幹線と特急とを乗り継いでおよそ4時間。そこに広がる人口二十万余りの小都会が私の郷里だった。悪い街ではない。凡そ都市と呼ばれる空間に必…

極夜抄(二十三)

下鴨神社の古本市で買った本を積読にしないために、そのうちの一冊を読み始めた。カレル・チャペックの『北欧の旅』である。 カレル・チャペックは説明するまでもなく戦間期チェコスロヴァキアを代表する劇作家である。私自身は『R. U. R.』、『山椒魚戦争』…

極夜抄(二十二)

「下鴨神社納涼古本まつり」、と云うのが所謂下鴨の古本市の正式名称である。阪急と京阪とを乗り継いで一時間少々。午前十時、私は出町柳に降り立った。下鴨神社の最寄駅である。出町柳から下鴨神社までは高野川を跨ぐ橋を渡り、鴨川デルタを背にして北へ向…

極夜抄(二十一)

ここ数日寝坊したり、遠出したり、寝坊したりしていたため記録をつけるのを忘れていた。結局僕はいつでも「こう」だ。いい加減家を出ようと思ってから三時間経ってようやくドアを開けるようなことはやめたい。最近、あちらこちらにボロが出ている。予定をす…

極夜抄(二十)

そろそろ修論をどの辺りに「落ち着かせる」か、検討しなければなぁ—そんなことを思いながらシャワーを浴びる。先日、年度はじめに出した研究計画を見るとなんとまあ、大風呂敷を広げていることかと呆れてしまった。4ヶ月経った現在、僕はそのうちの1割も明ら…

極夜抄(十九)

マクドナルドにて、パジャマのような格好をした御老体がコンビニのおにぎりを食べていて泣きそうになった。以前、コンビニでノーマスクの中学生集団に出会した時にも同じ気持ちになったのを覚えている。私は、恐らく彼らよりも常識的な行動をしていると思う…

極夜抄(十八)

昨日は結局よく眠れず、昼頃に起き、研究室に行くこともなく過ごしてしまった。早速目標達成率ゼロである。情けないものだ。今朝はなんとか9時半頃に起き、2限をオンラインで家から受講することに決めたので、まあ昨日よりはマシだろう。あんな低レベルな目…

極夜抄(十七)

とりあえず今日—もう昨日だが—は8時に起きるのには失敗したが、午前中に洗濯をし、昼までには研究室に行き、なんとか2時には眠れそうである。昨日立てた目標を早速一部達成できなかったが、まあ少しずつ頑張れば良い。1ヶ月ほど前、狂ったようにやたらとビッ…

極夜抄(十五)

ふと目が覚めた時間が朝7時半頃だったのを見て、これは夢ではないかと疑った。こんなにも人間らしい時間に起きられるとは!むろん、7時半という時間はだいたいの人にとって少しも早い時間ではないし、その時間に起きたら遅刻するよ、という人も多いだろう。…

極夜抄(十四)

ぼーっとしていたら図書館の本を延滞してしまい、二日のペナルティを食らった。最近何をしてもダメな気がする。僅かなマイナスの積み重ねが、大きな損失を生み出している。それは夜勤の疲れだったり、夏の暑さだったり、洗濯と掃除の先延ばしだったりする。…

極夜抄(十三)

昨晩バイトで電話口の客に理不尽なことを言われて以来気分がいつにも増して良くない。所詮アルバイトなのだから気落ちせずにいきたいものだが、頭ではそう思っていても未だに胃がキリキリする。つくづく自分は難儀な性格をしていると思う。 先日、世の中を震…

極夜抄(十二)

西武新宿駅前のルノアールで朝食を摂っていたら、店内に聴き覚えのあるメロディが流れてきた。フォーレ、組曲『ドリー』の一曲目、子守唄。それがなんらかの思い出を引き出すファクターになる、なんてことはない。ただ、知っている曲が流れたので反応しただ…

極夜抄(十一)

阪急電車のアナウンスが、京都河原町への到着を告げている。阪急に自動アナウンスが導入されたのはいつだったか、また河原町駅が“京都“河原町駅に改称されたのはいつだったか、もはや思い出せない。関西に来てはや六年、実は色々なことが変わっている。べつ…