五線軌条

生活と芸術とか。

2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

極夜抄(二十七)

急なノスタルジー(?)に駆られたのだろうか、先日、急に米澤穂信の古典部シリーズを読み返し始めた。 人並みに本を読むのは好きな私だが、好きな作家を訊かれると若干困ってしまう。好きな作品は存在しても、特定の作家を好きと言えるほど単一作家の作品群…

極夜抄(二十六)

日本学術振興会の電子システムにログインし、結果を確認した私は、そのままそっとブラウザを閉じた。仮にラップトップで接続していたならば、「ぱたりと閉じた」とでも記述しただろう。生憎私はスマートフォンで結果を見たので、そんな視覚的にわかりやすい…

極夜抄(二十五)

短い帰省を終え、都市生活に回帰してから二週間が経過した。今、私は大阪を離れ、東京は丸の内にいる。夜行バスの発車まで時間を潰す場所が見つからなかったため、中央郵便局の脇のベンチで時が過ぎるのを待っているのである。 日中こそ暑くなったが、夜はも…

極夜抄(二十四)

私は名阪間を西へと向かう新幹線の車内にいる。久しぶりというほどでもない帰省を終えたばかりだった。 大阪から新幹線と特急とを乗り継いでおよそ4時間。そこに広がる人口二十万余りの小都会が私の郷里だった。悪い街ではない。凡そ都市と呼ばれる空間に必…