五線軌条

生活と芸術とか。

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

極夜抄(十)

一歩、また一歩と冬が近づくたび、街は恋人たちで溢れるようになる—そんな気がする。あとひと月でクリスマスが来るのだ。 クリスマスという行事は好きだ。本邦においては宗教的文脈を骨抜きにされた催事と化しているが、それはそれで良いものだと思う。しか…

極夜抄(九)

あと10日で退職、そう思いながら職場への道を歩いている。 思えば、朝刊配達をしようと思った僕は阿呆だったのである。まず第一に修士課程を舐めていたし、第二には朝刊配達を舐めていた。ある意味では二重生活を送っているようなものだったのだが、この異な…

極夜抄(八)

怒涛の1週間だった。小旅行と演奏会と練習の後に演習発表があったのは誠にキャパシティを超えているとしか言いようがない。今まであまり後先を考えずに思った端から行動してきた結果がこれである。 どうにも私はギリギリでなんとかしてしまう術を心得てしま…

極夜抄(七)

朝六時の南方駅は想像の二倍は静かだった。阪急電車の沿線は関西屈指のハイソなエリアなのだが、三つの本線の「つけ根」に近ければ近いほど、ディープな界隈となる。南方の雑多な感じはそれをよく表している。 それ故、もっと目を覆いたくなるような状況—酔…