五線軌条

生活と芸術とか。

2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

極夜抄(六)

人とお酒を呑むのはいつぶりだろう。感染防止策と深夜労働とで長らく飲み会というものをしていなかったのだが、昨晩は少人数かつ早い時間までという条件で、お酒の席をようやく行うことが出来た。 もともと大人数のお酒の席は苦手なので四人という人数はちょ…

極夜抄(五)

昨日は午前休なのでゆっくりと起きても問題はなかった。ただ、だからといって気分がすぐれているわけではない。むしろ軽く頭が痛む。イブA剤を2錠流し込んで自分を誤魔化した。起きれば乱雑とした私の心と同様にごちゃごちゃな六畳間だ。本や段ボールは九龍…

極夜抄(四)

一日の寝坊は単に自己管理能力の欠如が露わになったものだが、二日連続となるとこれは自分だけのせいではない、と思わざるを得ない。 即ち、今日も起きたら二限の開始を過ぎていた。頭と腹とが軽く痛いので体調不良ではある。ただ、別に普通なら休むほどの痛…

極夜抄(三)

起きたら十一時半だった。この時、私は「バイトを辞めよう」と思った。 その日は二限に講義が入っていたのだ。にもかかわらず朝刊配達から帰宅後深い眠りに落ちてしまい、この始末である。 もともと生活習慣は乱れている方だった。朝刊の配達を始めようと思…

極夜抄(二)

日曜日はラフマニノフの二番を聴きに行った。と、書いただけではピアノ協奏曲なのか交響曲なのか不明だが、今回は「どちらも」である。即ち前半にピアノ協奏曲の二番、後半に交響曲の二番を演奏するプログラムだったのである。 前者は私が失恋した時にちょう…

極夜抄(一)

金曜日のことだ。私は昼過ぎに目を覚ました。本当はもう少し早く起きるつもりだったのだ。それが、連日の新聞配達の疲労で午前中に起きられない。早いとこやめた方がいいのだろう—そう思いながら身支度をする。二十分後には三限が始まる。ぎりぎりだが、走れ…

極夜抄 序

私は子どもの頃から本を読むのが好きだった。それ故、「自分で小説を書きたい」と思うのはまあ自然なことだろう。この10年で書き始めた物語は何本もあるが、完成させたものはほんの数本だ。これは、それぞれの小説が決して誰かに読んでもらうことを意図して…